近年のドラマ業界は非常に面白く、また激動化してきている。長年親しまれてきた分野であるゆえに、次第に供給過多状態にとなり、今や冗長なストーリー、マンネリ化していた演出では視聴者を騙すことすらままならなくなってきた感がある。つまり、温泉=セミヌード+殺人、刑事=無差別発砲、家政婦=見た!!!なんてコテコテのお約束では退屈極まりなく、そのテの代表選手「チャンバラ」などは、まあそれ自体嘘なのであるが、やはり記号として定着し、お茶の間のBGMにまで格下げされたのである。ウソピョン。

 しかし、日本テレビがこのドラマ=コテコテの不動の方程式を完全にブチ壊してくれたのだ。そう。伝説の土9(ドック)ドラマシリーズである。すなわち、聖龍伝説であり、銀狼怪奇ファイルであり、3姉妹探偵団であったりする。全てが新感覚、超新鮮。まるでスケバン刑事を初めて観たときのような感覚にとらわれるのである。
 なんか、こう、もう、これを観てると、テレビに掴みかかってナイアガラフォール級の涙を流しつつ「なんでだよぉぉぉ!!!」と絶叫したくなるのである。それほどインパクトが強く、かつナンセンスだった。表向きは「子供向けドラマ」としているが、着々と新しいドラマの分野が胎動していたのダ!

 日テレが投じた石の波紋は他局に及び、聖者の行進、略奪愛などの名作が続々と生まれていった。しかし、その中でひときわ異常に輝いていたのが「羅刹の家」だったのダ!

 

簡単に内容を語ると、田園調布の金持ち家に嫁いできた嫁と、そこの姑との壮絶な戦争を描いたホームコメディである。息子に固執し、嫁を呪う姑と、あくまで正義ぶる悪魔の嫁と、それをひっかきまわす偉い息子。逃げていったダンナ(父)や息子の妹、さらには従姉妹、愛人など、親戚他人を含んで毎週地獄絵図の戦乱。 
 
 

 では説明していこう。まずデフォルトとしてセリフは棒読み。今でこそ免疫ができているが、当初、その持って回したような言い方には耐えられず、背中を掻きむしりながら転げ回った覚えがある。さらに原作付きドラマにもかかわらず脚本も、どこのバカ・・・あわわ、エキセントリックな展開が好きな脚本家がつくったのか、驚くべきほどの秀逸さ。その味ときたら、昭和のあけぼの、若大将も青い山脈まっしぐらときたもんだテイストである。あ、わかんない?困った。
 このドラマ独自の演出として、「心に思ったことも、声(セリフ)として出る」こと、そして屋敷内でのロケはもちろん、地方、例えば京都、ホテル、車、駅までも含めて、ロケは全てスタジオ内での撮影。背景は全て合成。さらに言うならその合成の質ときたらジャンパーソン以下あわわ、ワイルドな出来である。まったく大したものだ。

 しかしこのドラマの本質はそこに在るのでは無い。このドラマの本質は、その余りのインパクトの強烈さとあかほりさとる級の展開のテンポの良さに在るのだ!嫁が家に帰り、電気を点けると、何故か「まっていたわよ」と、従姉妹登場。「あンたさえ・・・あンたさえいなければ、タカシさんは私のモノ。この家の財産もすべて私のモノなのよ〜」と言って、何故かどこから出したのか、を手に持ち、嫁に振り下ろす、つうか押し当てる感じ。嫁は「やめてェ〜」といって押し返すと、何故か吹っ飛ぶ従姉妹。嫁は夢中で庭へ飛び出すと、そこは何故かどこかの公園の噴水の前。そしてそこで従姉妹と乱闘になるが、これまた何故かそこに偶然「ようこさ〜ん(嫁)」と、片想いしていた男が現れ、「君はまちがっている〜」と、従姉妹をしばき倒す→従姉妹噴水にボチャン。男、嫁を慰める、何故か嫁に抱きつく、するとまたまた何故か「そういうことだったのね」と、夫の妹登場・・・・。このナンセンスでハイテンポな展開をKooLと語らずして何をKooLと語ろうぞ!何故か「何故か」が多いのは気のせいである。 
                                                                         written by Hide
 

NEXTKooL

BACK